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2023/03/09-放送事業者の片隅から



3月7日に公開となった「政治的公平に関する文書の公開について」が、めちゃくちゃ面白い。いろいろな報道があるだろうけど(見ていないので)、公開された文書をちゃんと読んで、自律した判段をした方がいいかなと思います。


前提として、議員が議会や予算委員会で質問をし、それを議事録に残していくことは大切な仕事の一つです。この「会議録」は、公的な文書として認められており、この積み重ねが議論の歴史ということにもなります。過去に記録されたものの上に今が成り立っています。その意味で、答弁と会議録は、立法に関わる方に取って最も大切な仕事です。


そして、これは、「政治的公平」という言葉に輪郭を与えたい一人の総理補佐官の物語でした。


・この答弁を実現することで、現政権に不利に働くのではないか?と考える秘書たち。

・メディアとの全面戦争になることを予見していた総務大臣。

・一つの番組内のコメンテーターの皆の意見が偏っていることに疑問を持っていた総理。

・総理補佐官とのやりとりを担当した総務省側の苦労の数々。

・昂ってクンロク入れちゃう総理補佐官は総務省のOB。


当初、解釈に対しての質問だったが、そこから徐々に境界線の輪郭が見えてきます。行政側は、この答弁が実現したら、行政指導とも言われかねないので、メディアとの全面戦争になる可能性を孕んでいる以上、なんとか考え直してもらおうとできることを模索します。


しかし、安倍総理は、自分に有利とか不利とか、関係なく、「正すべきは正す」というスタンスで、「政治的公平」の解釈の範囲を、「番組全体」(その放送局で放送する一定期間の全ての番組)で判段するのではなく、「一つの番組」でも、公平性は守るべきだよね、ということで、総理の意見が補佐官と一致したことで、状況を一気に推し進めました。


当初は法律の解釈を変えるのではなく、輪郭を整えるイメージで進ませていったのだが、総務委員会での答弁の日、磯崎総理補佐官はTwitterで、「従来はその放送事業者の番組を総合的に見て判断するとしていたのですが、極端な場合は一番組でも、政治的公平性に反する場合があるとしたのです。」と呟きました。


その日が、「政治的公平性」という言葉に輪郭を与えた日となりました。



映画見た気分です(笑。



<面白かったところ>

・答弁が構築されていく様子がよくわかる。

 議会の期間内に会議録に残すとなると、事前にすり合わせてストーリーを作っておかないと難しいよね。でないと、ほとんどの答弁が「調べてお返事します」ってことで議会が長引くだろうね。逃げられるし。

・誰も得しない?損はしてる?

 この文書は小西議員が公開したことで明るみに出ました。小西議員は旧自治省のOBなので、そのルートで総務省の誰かから情報を得たのでしょうか。知らんけど。ここに描かれているのは行政側の苦労です。OBなんだから悪いようにはしない、って話したのかな。

・極端な事例を突きつけて引き出す交渉術

 ありますよね、そういうの(笑。


<メディア視点での興味深いところ>

・メディアが事象に向き合っていないのか?も?

 事象に対して是々非々ではない報道が多い気がしてます。あの新聞はあっちよりとか、こっちよりとか、も同じで、これって本当はあっちとかこっちじゃないくて、これはこれ、それはそれ、で事象によって意見が分かれる方が自然な気がします。その基準って、願いとか想いとかで、それをメディアが持っているか?ってことで、それこそが自律なんだろうなと思います。その点において現在のメディアが「政治的公平性」をどのくらい保たれているのかはわかりません。見ていないので。

・コメンテーターが同調する感じは正直気持ち悪いと思ってる。

 いろいろな視点、いろいろな立場、示唆に飛んだ視座などをコメントするみたいなことがない番組は、確かにあるよね。

・番組全体という解釈について

 これは、特にこの数年、メディアがオンデマンドになった以上、難しいと思う。SNSの登場は、情報の偏りを加速させている。ずっとテレビを見ているわけでもなく、この番組だけ見る、みたいな状態なので、番組全体が成立しないという現実はあると思う。だからこそ、政治的に分断を呼ぶようなスタンスより、子育てについてはこう、とか、教育についてはこう、とか、同じテーマでもいくつかのスタンスを作るような編集方針の方が今の時代にあっているようにも思います。少なくとも一つの番組で2つ以上の視点を持ちたいなと思った。



最近、「自律」についてずっと思考しているので、その点についてもいろいろと示唆のある内容でした。いろいろとプロセスが話題になってますが、それよりも、偏った番組を作っていたら、国会に呼んで議員が、直接編集方針聴ける可能性が生まれちゃいました。メディアには、政治的な介入や監視から、一定の距離を保てる「自律」が権利として与えられていたのに。ここは、全てのメディアが連名で怒った方がいいと思う。改めてメディアは、「自律した機関であること」への自負と覚悟を持って、会議録から発言の削除を求めるのは難しいだろうけど何か考えた方が良さそうだなと思った次第です。

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